Jah524’s blog

気が向いた時に技術的なことを書いたりします

Google Science Jam参加報告(メンター)

お久しぶりです。

三日坊主だろうと、せめて思い出した時だけでも、何か書いておこうと思います。
ので、開発関連ではないのですが、興味深いイベントに参加していたので、その報告でもしようかと。
もう3週間前の内容ですが、今回はGoogcle Science Jamというイベントでの参加報告をしようと思います。

どんなイベント?何やったの?

Google Science Jamというイベントにメンターとして参加していました。

メンターの役割を簡単に説明すると、主役である高校生が彼/彼女らのテーマについて研究をするから、研究活動の面倒を見てやってくれ、ということですね。
あくまで面倒をみることなので、自分もプレイヤーとして参加してしまうのはタブーです。
従って、メンターの出来る範囲は、限られています。
例えば、

  • 彼/彼女らの考えている手段で、目的が果たせるのかどうかの確認
  • メンターから質問をすることで、なぜその手段を選ぶのかを明確にさせる
  • 引用やIMRaD等、適切な表現ができているかのチェック

などなどです。

私のチームでは、基本的にはLineで連絡を取り、議論や発表準備等ガッツリと時間を確保したい時にGoogle Hangoutsで、オンライン上でコミュニケーションをとり、メンタリングを行うという形式でした。

ちなみに、メンター参加者は大体B4~D1くらいでした(自分はD1)。

なんで参加したの?

きっかけは今年から研究室に配属された助教の方から紹介されたことです。
次の2つに重きをおいた説明でした。

  • 例えば教員として求職するときに、教育経験として応募用紙に書ける
  • 高校生とはいえど、高い志を持った面々が集まるので、研究のモチベーションがわけてもらえるかも

私は将来、自分で事業をしたいと思っているので、特に教員になる等アカデミックに残るつもりはありません。
研究へのモチベーションに関しても、就活の時に出会えたメンバーが社会で頑張っていたり、関連する研究分野にもライバルは多いので、競争心は消えることはないです。

しかしその一方で、私は今年度から研究室の学部生のメンターともなり、このイベントについて知る少し前から、自分のメンタリングスキルについて気になっていたところでした。
特に将来、エンジニアや研究者も雇用する可能性が高く、その時のためのちょうどいい機会なので、少なくとも意識しておこうと思っていた時期でした。
Google Science Jamで、自分のメンタリングで直すべきところがあれば、今のうちに直しておこう、というのが今回の一番の参加の動機だったと記憶しています。

2番目以降の動機としては、研究活動に勤しむ高校生がどのような雰囲気なのかという興味であったり、他のメンターやスポンサーの社会人の方々と知り合いになれるかもしれないというところだったりします。

キックオフキャンプはどうだった?

つくばの高エネルギー加速器研究機構さんのところに二泊三日でお世話になりました。
施設の見学が基本でしたが、ノーベル賞受賞者小林誠さんの公演などもありました。
専門分野は全く違いましたが、それでもなかなか楽しめたのは意外でした。
むしろ25歳にもなって、普通に高校生と打ち解けられたのは自分でも驚きました。

もちろん見学以外にも、チームでの作業がありました。
発表内容についてののテンプレートが配られ、それについて高校生が考える、という内容でした。
この時ほとんどのメンターは、「なんで?」と尋ね続ける、研究室で飼われているオウムのようになっていたことでしょう。
3日目にはまとめた目標について発表し、スポンサーの方から意見をもらったりしていました。

3ヶ月の間はどんな感じだった?

既に書いたように、キックオフキャンプ以降は、発表会当日まで顔を合わせていませんでした。
初期の段階では、基本的には高校生が研究を進め、時折確認をするという体制でした。

私のチームでは記憶の忘却がテーマでした。
従って、相当量の被験者の募集をする必要があり、そのデータを収集する必要がありました。
また、先行研究調査を得ないと、研究の意義が伝わりにくくなるため、ある程度の時間を先行研究調査と本実験の時間として時間を確保した方がいい旨をアドバイスした記憶があります。

全体的には、おおまかに順調に進んでいました。
順調ではなかった点としては次の4つです。

  1. 本来予備実験としての実験を、時間の都合上、本実験として扱わざるを得なくなった
  2. 高校生の子たちが、自分の想定よりも、先行研究との差別化を意識していなかったこと
  3. (↑ゆえに、)研究のストーリーに必然性がなかったこと
  4. 発表練習に当てられる時間が十分ではなかった

少し細かく説明します。

1. 本来予備実験としての実験を、時間の都合上、本実験として扱わざるを得なくなった

このアクシデントは、想定していた範囲内でした。
そこそこ時間の余裕は確保してきたつもりでしたが、予定通りにあらゆることが進むことはめったにないですからね。
(そもそも普通に高校生しているので、教育を受けた後の平日の17:00~や土日しか時間が使えません。しかも学園祭や修学旅行などもあるのです!)
最終的に被験者を同じ高校内で100人以上集めたのですが、結構無理を言ってお願いしていたようでした。
もちろん被験者への謝礼などがあるわけでもなく、そんな中毎日実験協力させられたわけです。
興味のない被験者の方にとっては、何度も実験に半強制的に参加させられているわけですからね。

2.高校生の子たちが、自分の想定よりも、先行研究との差別化を意識していなかったこと

この項目に関しては、一番悩まされた箇所だったと思います。
恐らく、限定した環境下での記憶忘却の説明ではなく、あらゆる事象について説明ができる、と思っていたのではないかと思います。
従って、先行研究がないと、自分たちの発表の立ち位置が伝わりにくいよ、と伝えることができたのは、発表練習段階になってからでした。
例えば、覚える対象となる刺激の吟味は、先行研究調査によって行なわれるべきです。
(ちなみに、刺激は4×4のマスの中に数字がランダムに配列されているものを用いました。)
キックオフキャンプの頃から口頭では強調して伝えていたつもりでしたが、やはり本人達が必要性を実感をしないことには、伝わらないものかと思います。
そういう意味では、このイベントを通して、先行研究周りの重要性が伝わっていれば成功です。

3.研究のストーリーに必然性がなかったこと

2.の続きになりますが、なぜこの実験設定にしたのか(とりわけ、なぜこの刺激を覚えさせたのか)の説明を吟味していなかったため、事後的にストーリーの構築を行いました(実験の結果によって研究のストーリーが変わるなどはよくある話らしいです(by Ph.D持ちの面々))。

今回の場合、高校生は黒板や教科書、ノート等に覚える対象が散布しており、その中で忘れやすいポイントを発見するというストーリーになりました。
甘いところはあれど、刺激で4×4を活用した理由などが納得できるものになったと思います。

4. 発表会当日4日前から前日までの修学旅行

私自身も忘れていたので、申し訳なかったのですが、発表会前日まで修学旅行が予定されていました。
2週間前まで普通に時間がとれるものと思っていて、余裕を持たせていた期間が4日分とかだったので、急激に色々やらなければいけなくなってしまっていました。
ポスターの作成だったり、口頭発表用のスライドの作成だったりと、時間がギリギリだったことを思い出せます。
なんとか印刷などもギリギリで終えることができ、皆は修学旅行へ旅立って行きました。
(沖縄だってさ、まだ行ったことない、羨ましい)
おみやげもいくつか買ってきてくれたので許しました(ぇ

ただ、発表練習をする時間が全くとれなかったので、当日まで心残りではありました。

発表当日はどうだった?

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上の写真は私が面倒を見たチームの発表です。

全体の様子は、youtubeにリンクが上がっていたので、ここに紹介します(7時間のファイルとか投稿できるんですね)。


Science Jam 2015 - YouTube

雨が結構降っていて会場である日本科学未来館へ向かうのが大変でした。
サムネイルでもわかるように、贅沢な環境での発表でした。
それと、実は直前まで修正作業を行っていました。

発表練習が全くできなかったのでちょっぴり心配でしたが、思ってたよりは上手く出来ていたと思います。 惜しむらくは、実験の結果から考察できたことと、研究背景を結びつけた説明ができると、よりよかったかもしれません。

残念ながら、受賞自体は逃しましたが、終わった後の会場や懇親会で、実は惜しいところまでいっていたと言われ、高校生の皆は悔しがっていました。
最初にキックオフキャンプなどでは、狙えたら狙うと言っていた程度だったので、実は結構ガッツリ狙っていたというのは意外でした。
他のチームでも、いくらか目についた限りでも狙っていたようで、虎視眈々としていたのだなぁというのが驚きでした。

その他

メンタリングを振り返って

まずメンターとして、以下の点について心がけていました。

  1. 基本的に放っておく
  2. 指摘だけではなく、良い点もしっかり伝える
  3. 必ずしも受賞は目指さない

1. 基本的に放っておく

研究に関して必要な手ほどきを、面倒見よく与えることもできるのですが、それは研究活動において本質的ではないと私は考えています。
必要な手ほどきを受ける場は、高校までのいわゆる「スクール」と大学の講義のみであって、研究活動は自身で目的に対してアプローチすることだと思っています。
ここで私があれやこれやと口を出してしまっては、スクールでできることと所詮同じで、研究活動としての本質を逃すと考えていました。
今回のイベントは、あくまで研究活動の補佐であったため、研究室ではツッコミいれてる箇所でもわざとスルーしたりも結構しました。

また相手は同じゼミの班に所属する大学生ではないため、担当する高校生のモチベーションによってはグダグダな研究になってしまってもいいと思っていました。
その代わり、求められたり、モチベーションが高い限りはしっかり補助してあげようとも思っていました。

2. 指摘だけではなく、良い点もしっかり伝える

指摘は基本的にできていない箇所を強調してしまう効果があるので、指摘が多すぎると高校生がげんなりとしてしまう可能性があります。
比較できるような行動は起こしていなかったので、良し悪しは比較できませんが、研究へのモチベーションを低下させにくくさせるためには、必要な行動だったと思います。

3. 必ずしも受賞は目指さない

結果的に受賞をするのであれば、それは素晴らしいことだと思います。
一方で、研究経験を行うという趣旨が今回のイベントにおいてより重要であると考えていました。
もし本気で受賞を目指すのであれば、仮説に対して先行研究を綿密に調査し、妥当な実験計画を組む必要があります。
高校生のもともとの経験にもよりますが、先行研究調査/実験デザインの立案はそれぞれ十分な経験が必要であるため、場合によってはメンターがかなり首を突っ込んだアドバイスを行う必要があります。
私は、既に上記で記述したように、スクール形式のメンタリングは行う方向を考えていなかったので、実験までの準備は高校生に一任しました。
その結果、ストーリーに必然性がなくなるなどの問題もやはり出てきましたが、そこからどのようにストーリーを組み立て直すのかという、とても重要な経験が出来たものだと思っています。 今後彼/彼女らが研究をする際には、先行研究調査/実験デザインの立案にはとりわけ気をつけるようになっているのではないでしょうか。

全体を振り返って

出来なかったことが多めに記述されているので、どうせなら良かったことも書きたいと思います。

高校生のモチベーションが高かった

そもそもこんなイベントに参加する意思を示しているので大丈夫だろうとは思っていましたが、一応心配していました。
というのも、私の考えていたメンタリングの方向に、高校生のモチベ低さが加わると、研究の完成度が恐ろしいことになってしまうからです。
しかし、上記にも述べたように、被験者を100名以上集める、壁にぶつかってもめげずに継続して研究をまとめた、というように、よく頑張ったなと思います。
(そしてめげずに頑張ってくれたおかげで、自分もメンタリングをしたんだ!と主張できます)

高校生が素直だったこと

どうせなら具体的なエピソードをひとつ。
キックオフキャンプのポスター発表の時に、他のチームのポスターを見ている時に質問をする、という行動が当たり前にはなく、戸惑っているようでもありました。
そこで、質問をせめて一つはしよう、とアドバイスをしたところ、3人とも質問をしだし始めました。
素直にアドバイスに対して反応してくれるため、とてもメンタリングがしやすかったです。

連絡がしっかりと取れていたこと

データに対して分析を行ったり、発表準備などをする段階といった重要な期間では、しっかりと連絡が取れていたと思います。
メンターは、Google+でメンター専用コミュニティがあったのですが、高校生と連絡がとれない、などの報告があったりと、チームによっては連絡から四苦八苦していたようです。
連絡が取れないとメンタリングそのものが不可能なので、私のチームは連絡がしっかりとれていて、とても助かりました。


以上が、Google Science Jamのメンターとしての参加報告となります。
なんか文章長くなってしまって、読み人にも辛い文章になってしまった...!
出来る限り小分けにして、ブログに書く癖をつけておきたいところですね。